2月の中国 絹事情

遅れ気味ですみません。

1月30日。
中国農業部種植業管理司封槐松所長が
2014年度の中国の蚕糸生産動向について演説しました。

  • 桑生産面積が増加・柞糸桑(野生種の一種の蚕用)面積が減少。 広西省・四川省・雲南省が拡大。その他の養蚕区は安定。 桑園の面積は約83.3万ヘクタールで、去年より4,733ヘクタール(0.57パーセント)増加し、 野柞蚕は6.0パーセント減少し77.13万ヘクタールになりました。
    (※蚕には大きく分けて家蚕と野蚕があります。 家蚕は上質な絹糸を採る為に品種改良を繰り返した結果生まれた品種で、 野蚕は野生の蚕で、野柞蚕はその代表です。 従来和装に使われる絹糸は家蚕から採っていましたが、 最近は野柞蚕の糸の珍しさ、元々持った薄緑や薄茶の色を楽しもうという 企画が呉服企業で組まれた事から使われています。)
  • 繭種の生産量は若干減少し1,631万箱。前年同期比約1.1パーセントの減産。
  • 2014年度の平均繭価格は約1,835元/50キロで前年同期比約8.71パーセントの下落。
    食用蛾の価格は約1,881元/50キロで12.71パーセント上昇など。
  • 2014年度の広西省シルク生産動向について。
    広西シルク協会の蘭樹思氏が1月19のインタビューにて説明しました。
    繭生産は27.95万トンで10年連続で中国一。
    1月から10月までの生糸の生産量は3.18万トンになり
    2014年度通期での予想は約3.6万トン(約57.6万俵)で史上最高量。
    ただし、2015年の方針は全省が原材料から生地・製品に転換すべきで、また量から質への転換も必要。
    理由は、
    生糸生産拡大のペースの速過ぎにより、一部の製糸工場の稼働率が低下。
    繭を高値で購入し生糸を価格競争し安く売って10年来の最悪の状況の年になり、
    結果、赤字企業が90パーセント以上で、大赤字では500万元(約9,500万円)以上に。

    1月15日、2014年度の安徽省シルク協会大会で
    和装生地の生産では従来のシャトル織機かられピア織機の導入で、
    中国国内初の成功例を報告されました。
    (※シャトル織機=経糸の間を緯糸用シャトル(糸巻)を往復させて織っていく織機。
      レピア織機=経糸の間を直接機械で横糸を通していく織機。

      レピア織機のメリットは緯糸を一旦、シャトルに巻き直す手間が無い事と、
      シャトル織機はシャトルに緯糸を巻く糸の長さが限られる為、
      シャトル織機に対して緯糸の節が起こりにくい事。
      ⇒⇒⇒シャトル織機はシャトルから緯糸が無くなると自動的に次の緯糸を紡ぐ為、その結び目が生地ナン=生地傷みと判断されることが多い。

      羽二重のレピアという名称もこの事が由来。)

    2015年1月1日から中国シルクの輸出商品の増値税(日本での消費税に当たる)還付は
    シルク製品・織物・シルク撚糸は全て17パーセントの全額となりました。
    関税から生糸は15パーセントのまま維持しています。

    生糸相場はヨーロッパ・日本等先進国が休みで動きは小さいです。
    沿岸部は経糸の価格は若干下がり、トン当たり平均37.5から38.5万元、
    広西の緯糸は、前月とほぼ同じで、トン当たり31.5から32.5万元。

    一部の製糸工場は既にこれ以上の赤字を避けるため旧正月に入っています。
    (嘉興・南寧生糸繭取引所は今年の旧正月休みは2月16日から25日)

    余談になりますが、
    中国の人件費高騰により、織工場がベトナムに移行の様相がみられます。
    技術的には綸子、ちりめん、精華の生地は成功しつつあるようです。
    しかし、羽二重(胴裏・肩裏などに使用)の生地はまだベトナムでは織れないようです。
    理由は、撚糸が懸っている糸は生地難が出にくいのですが、
    撚糸のかかっていない糸を織るのはデリケートなようです。

    ただし、ベトナムで織るにしても糸は中国糸を使うため
    大きく価格を下げる事は出来ないようです。
    因みに日本国内の生地もほとんどは中国糸で織っています。

    中国の絹の生産は、
    全体的にアメリカ・ヨーロッパが現状維持で、
    中国国内向けが拡大、日本の和装向けが減少です。


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